モバイルユーザエクスペリエンス
先週末の3連休に読みふけっていた本です。
モバイルフロンティア よりよいモバイルUXを生み出すためのデザインガイド
- 作者: 安藤幸央,佐藤伸哉,青木博信,清水かほる,野澤紘子,羽山祥樹,脇阪善則
- 出版社/メーカー: 丸善出版
- 発売日: 2013/04/25
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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ユーザエクスペリエンスが何なのかということを考えさせられました。
これまでのスマートフォンに対する見方が変わったという意味では、目からウロコが落ちた本です。
PCは仕事をするツールとして普及し、机に固定されて画面に没入して集中して使うもの。そして、WindowsのUIはGUI(Graphical User Interface)は情報をものとして表現するために画像を使用しており、すべてのオプションはメニューとして見ることができるようになっていて、ユーザはその中から自分で探して、マウスやキーボードを通して間接的に操作するというインタラクションになっています。
一方、スマートフォンはNUI(Natural User Interface)という空間を介して情報をオブジェクトとして表すUIになっています。NUIはGUIと異なって人間の直観を利用しており、見たままが得られるのではなく、行ったままが得られるという、人間の持つ生まれながらの感覚に基づいています。NUIはコンテクストを重視し、システムが置かれた環境を重視し、インタラクションは速くて少ないのです。タッチスクリーンによって、インタラクションの仲介がなくなったため、ユーザは直接的かつ自然な方法で情報を操作することができるようになりました。NUIのシステムには絶対的なものは存在せず、その原則は状況に応じて変化します。原則というよりはその場で行動が分析され、枠組みに沿った解釈が行われます。(出典:モバイルフロンティア よりよいモバイルUXを生み出すためのデザインガイド CHAPTER2 モバイルNUIパラダイムの登場)
まず、私はどちらもGUIと思っていたので、そこから無知だなと思いましたが、確かにタッチスクリーンによって大きく操作が変わったスマートフォンは情報をそのまま触って直観的に操作しているという表現に納得したのでした。
そして、モバイルUXはPCと違って外で歩いたりしながら、いろんな環境変化の中で、通信環境が不安定になったり、ほかのことに注意がそがれたりして(皆さんもながらスマホは経験があると思いますが、画面に集中してしまうと危険ですから、注意は周囲に向いたり画面に向いたり不安定ですね)中断されることが前提で設計されているのだということも新しい気付きでした。
そう考えると、なぜLINEがこんなに使われ始めたのか、とか、なぜスマートフォンがガラケーに代わって普及してきたのかという理由がわかってきました。
スマートフォンは小さなPCということができると思いますが、PCを外に持ち出して掌の中でつかえるようにした結果、このようなUIが生み出されたのかなと解釈しています。様々な機能を小さな画面の中でしばしば中断される不安定な環境下でバッテリーや通信を気にしながら動作するシステムが選択した速くて少ないインタラクションなのだと。すばやく操作して目的に到達しないと、すぐに中断されてしまうかもしれないからです。
そうすると、アプリケーションやwebサイトのUIもそういった環境下であることを十分に理解して設計する必要があるのですが、そうなっているもの、なっていないものがあるなと思います。この本の中では外に出てUIを考えるように薦めていますが、確かに外にいることを常に意識しないと忘れてしまいそうです。
モバイルユーザエクスペリエンスというものが何なのか、じっくりと考えるきっかけとなる良書でした。この世界をもっと知りたいという興味がわいてきました。